術後に起こる色素沈着やシワの問題
ワキガ・多汗症治療で術後に起こりやすいトラブルとして、色素沈着やシワといった問題があります。これは必ず起こるというものではなく、手術法によってもその発生リスクは異なりますが、起こりやすいものであることは確かです。なぜこうした現象が起こるのか、避けることはできるのか、ここで考えてみましょう、まずは色素沈着からです。
色素沈着は皮下の毛細血管が広範囲に破壊されたことで起こる微細な出血、つまり内出血から起こるものです。そもそもワキガ・多汗症治療は皮下の汗腺類を破壊もしくは除去することが目的ですから、そうした処置に伴う毛細血管の損傷はある程度避けることができません。ですがそれが広範囲に、しかも激しく発生してしまうと、回復が遅れ、やがて「しみ」と同じような色素沈着として残ってしまう場合があります。
もちろん、この沈着は時間の経過とともに少しずつ薄れていきますが、そのスピードには個人差があります。ことに体質的に皮膚のメラニン色素の多い方(色黒の方や、日焼けするとすぐ肌が黒くなる方)ですと、残りやすくなってしまいます。
皮下の組織を広く削り取る剪除法ですと、さらにこの色素沈着が残りやすくなります。また吸引法や超音波法などでも、部分的に超音波を当てすぎたり、組織を取りすぎたりすると、こうした現象が起こることがあります。
術後の「シワ」はなぜ発生するのか
色素沈着と同じように、これもワキガ・多汗症治療に特徴的なトラブルといえます。皮下の汗腺類を取り除くと、術後の皮膚は皮下組織をはぎ取られ、剥離された状態になります。そのため治療後は皮膚がしっかり皮下組織と結合し、固定されるまで、圧迫固定しておく必要があります。ですが治療の際に組織を除去しすぎて皮膚がきわめて薄い状態になっていたり、圧迫固定が不十分だったり、さらに皮膚が回復する前に腕を大きく動かすなどワキに負荷を与えてしまったりすると、薄くなっている表皮がずれ、シワが発生してしまうことがあるのです。
シワができた状態で患部が固定されてしまうと、もう元に戻すことはできません。また皮膚がたるんでシワになってしまったような状態ですと、ワキの違和感にもつながり、腕を動かすたびに煩わしさを感じるようにもなってしまいます。
色素沈着やシワを防ぐためには
これらのトラブルの原因のひとつは、手術の際に「皮下組織を必要以上に取りすぎてしまう」ことです。ですからそうしたことのないように治療法を選ぶことが第一です。また吸引法や超音波法は手探りでの手術になりますから、技術が未熟な医師が執刀するとこうしたリスクが高まる、ということも覚えておいた方がよいでしょう。
もう一つの注意点としては、術後の初期過程では安静を心がけていただくということです。これは患者様にくれぐれもお願いしたいところです。ワキガ・多汗症の手術のあとは、医師やスタッフからいくつかの注意事項をお伝えします。どれも難しいことではないのですが、決して軽視せず、しっかり守っていただくようにお願いします。そうすることで、これらのトラブルの発生リスクを低く抑えることができるのですから。
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